人工原子による電子波の散乱位相が人工原子内の電子軌道を反映する様子を初めて観測
電子波が原子によって散乱される際に生じる位相のずれは、物理学の最も基本的な問題のひとつです。位相のずれに原子内の電子軌道の形(偶奇性)が反映されることが理論的に指摘されていた一方、1997年にNatureの掲載された論文では、電子を10個以上内包する人工原子による散乱で生じる位相のずれが、電子数を1変化させる毎に元に戻るという、軌道に依存しない普遍的な振る舞いが報告されました。その起源を巡って多くの研究が行われましたが、未解明のまま現在に至っていました。
本研究では、電子波の位相のずれを精密且つ信頼性高く測定できる独自の二経路干渉計を用いて、多電子の人工原子でも位相のずれが軌道の形を反映することを世界で初めて明らかにしました。更に、現実的な実験系で正しい測定を行えば普遍的な位相変化は観測され得ないことを示し、20年来の電子の散乱位相の問題に決着をつけました。開発した位相測定技術は、人工原子の内部構造を探る方法として有用であり、散乱問題が関わる様々な物理現象の解明や、電子波の位相を情報のリソースとする量子情報デバイスにも応用できます。
プレスリリース: https://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_201711241130474371680739.html