トップハイライトスピンバレーホール効果

人工原子・人工分子の電子状態

グラフェンにおいてスピンとバレーの新しい電荷中性流を発見

電荷中性流はジュール熱を伴わないため、電流に比べてエネルギーの散逸が少なく、省電力デバイスの動作原理として精力的に研究されています。これまで、電荷中性流としてスピン流とバレー流の2つが知られていました。バレー流は、生成効率が高い一方、結晶に特有の物理量であるため、外部に取り出しにくいことが問題となっています。
本研究では、2層グラフェン中の電子間相互作用によって自発的に対称性が破れた層間反強磁性状態において発生する、新種の電荷中性流を発見しました。これは、スピンとバレーが組み合わさった中性流(スピン・バレー流)であり、現在実用化研究が進められているスピン流と、スピン流より高効率で生成可能なバレー流とを相互変換するデバイスへの応用が期待できます。
また、スピン・バレー流が生成される層間反強磁性状態は面内にスピンが揃った準長距離秩序を有し、温度を上げることによって準長距離秩序を失うコステリッツ-サウレス転移が起きることを示唆する結果が得られました。

本研究は、NIMS、東北大学などとの共同研究によって行われました。
  • M. Tanaka, Y. Shimazaki, I. V. Borzenets, K. Watanabe, T. Taniguchi, S. Tarucha, and M. Yamamoto, “Charge Neutral Current Generation in a Spontaneous Quantum Hall Antiferromagnet”, Phys. Rev. Lett. 126, 016801 (2021).
  • M. Tanaka, K. Watanabe, T. Taniguchi, K. Nomura, S. Tarucha, M. Yamamoto, “Temperature-induced phase transitions in the correlated quantum Hall state of bilayer graphene”, Phys. Rev. B 105, 075427 (2022).

プレスリリース: https://www.riken.jp/press/2021/20210108_1/index.html

 

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